CRAFTSMANSHIP M1のものづくり

職人 vs フルオートメーション

 

今日では、「NCやCNCといったフルオートメーションの加工機械が、人間による手作業に比べて優れている」という見解が一般的な見方として定着しつつあります。

Wikipediaより引用:『NC加工を導入するメリットは、同じ製品を複数作成する際に、同じ寸法(但し工作機械固有の誤差は残る)のものを同じ作業時間で、大量に作ることができることである。人手による作業では、作業者のスキルレベルによって精度や作業時間に大きなばらつきが生じやすく、品質管理が難しいが、それらの問題点を解消できるものである』

ところが、「腕の良い熟練工が『職人の勘所』で、高度に自動化されたNCやCNCよりも高精度かつ高品質の製品を生み出す。」こんな、ほとんど非論理的とも思えるフレーズを地で行っているのがエムワン精工です。

ではなぜこんなことが可能なのか?本当に可能なのか?といったあたりを、分かりやすく説明します。

1. 精度に立ちはだかる様々な障害

 

A.変形の問題:上図のよう両端を支持された円筒状のワークに砥石を接触させて研磨すると、ワークの変形(たわみ)、あるいは砥石軸の逃げによって、研削後の工作物に切り残しが生じ、両端が細く、中央が太い形状になってしまいます。

逆に、工作物に対する摩擦熱が大きい場合は、熱膨張した部分を削り込むことによってオーバーカットになってしまう場合もあります。

B.摩擦熱の問題:砥石の回転速度、ワークと砥石の接触面積の大きさ、接触時間の長さ、ブランクの材質など、様々な要因によって研削焼けや研削割れが生じます。

C.砥石の選択:ワークの材質や意図する形状にマッチしない砥石を選択すると、狙った精度が得られないばかりか、生産性(切れ味)の低下、摩擦による発熱量の増加によって焼けや割れの原因になります。

2. 「経験」と「五感」の技

職人は、上記のような問題に対して適切に状況判断する能力を無数の試行錯誤を通じて学びます。NCやCNCといったフルオートメーションの工作機械がどんなに発達したとしても、こうした長年の経験に匹敵する判断を、刻々と変化する状況に応じてできるようになるのは困難であるかも知れません。当然、プログラムに複数のパラメータを入力し、様々な状況にある程度対応することは可能でしょう。しかしそのパラメータを入力するのは人間なので、どんなに自動化の技術が進化したとしても、やはり最後は熟練した職人の経験値が製品の完成度を左右することに違いありません。

当社の強みは、変形、発熱、砥石の選択など、複合的な要素を考慮しながら、さらに、気温、視覚、機械の音、匂い、指先の感覚など、五感を通じて微調整を加え、最高品質の製品を手がけることに生き甲斐を感じる職人達が、日々しのぎを削っていることです。加工の開始から終了まで手放しで動き続ける自動機械には、必要性を感知して加工を中断し、修正を加えることや、その日の環境や機械の調子を感じ取って、日々設定を変えることは難しいでしょう。プログラミングをする担当者に十分な経験と技量がない場合は、なおのことです。

当社の製品の多くが、しばしば工作機械の基幹となる回転系部品や自動車の操舵系部品、半導体製造装置の位置決め系部品といった、根本的に精度の妥協が許されない部分で使用されます。そうした製品群の背後に、一品入魂の集中力で生きた技術とノウハウを注入する当社の職人達がいるのです。

初めて当社を使っていただいたお客様からは、「思っていたよりも品質が高かった」「他社製品よりも組み付けがしやすかった」などの声が、既存のお客様からは、「代替の会社が見つからない」といった声が聞かれます。事実、ある大手メーカーはある基幹部品の100%を当社から納入しています。

3. 人間力+オートメーション

実は「職人 vs オートメーション」という構図は、当社のスタイルを正しく反映していません。オートメーション技術は加工の能率向上のために欠くことができません。エムワン精工でも要求精度に応じて下加工、部分加工、全加工などに、CNC研削盤やCNC切削加工機を汎用工作機械と適材適所で使い分けることでCD(コストダウン)を図りながら、品質と生産性を両立させています。今後は、ここ蒲田だけでなく日本全体の問題とも言える「技術伝承の問題」に向き合いながら、より付加価値の高い製品を加工できる人財を育てていくことが課題と言えるでしょう。

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